北方水滸伝

自分にとって水滸伝とは、忌まわしくも美しく、心躍る名著なのだが、心の底から本当に好きなのかとと問われると、はっきりと言い切れないのだ。それは、話の内容云々ではなく、自分の今までの生活がそうさせているのだと思う。
ゲームの幻想水滸伝1・2はやったし、北方水滸伝の全19巻と楊令伝の1~4巻は読んだのだ。決して嫌いではない。嫌いではないが、本当に好きになれない理由が、この作品を楽しんだ時期が、自分にとって辛い時期だったのだと思う。ゆえに、楽しむと同時に暗く憂鬱な気分にされるようで、どんな青空の下であっても、お金があって好きなお酒や物に囲まれていようとも、どんよりとした冬曇りの気持ちになるのだ。

辛かったことの詳細は書かない。

この水滸伝という作品、wikiでは「明代の中国で書かれた長編白話小説」とあり、水滸伝のほかに西遊記・三国志演義・金瓶梅があり、これらとともに四大奇書といわれている。
ストーリーの概要としては、宋代末期の腐敗した政治体制をひっくり返そうという、現代風に言えば革命運動を大げさに書したものである。民主化革命といえば、直近ではジャスミン革命が有名だろうか。

水滸伝では、革命運動の下108人の志を共にする同志が集い、宋をひっくり返して、民の為の国家を建国しようと働くわけだが、一方で国を守るために努める者もいて、北方水滸伝では、そのどちらの考えも理解できるようになっている。
組織腐敗に賄賂、重い徴税と楽にならない暮らし、荒んだ地域には盗賊が跋扈し、さらに悪循環を生む。それらに立ち向かおうと宋江らは奔走するが、一方で国家から見れば、叛徒であり賊軍である。反乱は国家を疲弊させ、疲弊した国家はさらに腐っていく。腐れば腐るほど民の暮らしは辛くなり、誰もが不幸になる。不幸になるのは宋だけではなく、隣国の遼や西夏にも飛び火する・・・。

大げさすぎるほどの壮大なストーリーを、北方ワールド全開で書かれているのだから、読む目は止まらない。心に響く名台詞や、ハッとさせられるトリック、技法、そして話の展開、すべてが完璧な作品である。ぜひ、いろんな人に読んでいただきたい。そして、読み終えた後、今の日本がどう見えるか、ぜひ試していただきたい。

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